釣り人にとって、リビングで自慢の釣具に磨きをかけているひと時は、もしかすると釣り糸をたれている時より楽しい時間なのかも知れません。 ハクセイレプリカは、そんな、くつろぎの一時を一層深みの有る時間に演出します。
私は,長年にわたり、魚、イセエビ等の、本物のハクセイの製作を手掛けてまいりました。
しかし、イセエビ等の甲殻類のハクセイについては、充分に満足のいくものを製作する事ができましたが、魚のハクセイについては、幾ら技術を追求致しましても、どうしても、頭部やヒレに「しおれ感」をともない、活きていた時の、みずみずしく元気の有る姿「いきいき感」を再現する事は出来ませんでした。
また、魚のハクセイの場合、毛皮を持つ哺乳類と異なり、着色が必要ですが、「ニジマス」のように、ウロコと関係なく模様のついた川魚については、熟練したハクセイ職人であれば、比較的容易に色柄を再現する事が出来ますが、「真鯛」「黒鯛」のように、ウロコ一枚一枚に模様がある魚の場合、活魚の色合いを再現する事は極めて難しく、私はもとより、熟練職人が、丹念に時間を掛けて着色したという作品を方々見回わしてみましても、決して満足の行く色合いの物を発見することはできませんでした。
そこで私は、本物のハクセイ製作に見切りをつけ(1990年当時)、 シリコーンゴムで、直接、活魚の型を取り、こうして出来た鋳型こ合成樹脂を流し込む事で成型する、レプリカ(複製)という工法に切り替えました。
シリコーンゴムは、ウロコ一枚の指紋のような微細な文様に到るまで、忠実に原型(活魚)の型を取る事ができます。
また、この型取りをしたシリコーンゴムに流し込む液状の合成樹脂(ポリウレタン樹脂)は、硬化後は、大変、強固な物質となって、原型(活魚)の形状を完璧に複製します。
以上のような理由から、生きている魚の姿を忠実に再現する事においては、どうしても「しおれ感」を伴う本物のハクセイよりも、レプリカの方が優れていると私は考えました。
また、着色に関しましても、ハクセイ用染料に限定される本物のハクセイよりも、色彩の豊富なアクリルやラッカー系塗料が使用できる合成樹脂のレプリカの方が断然有利です。
当方が、独自に編み出した着色法を、施す事ができますのも、レプリカならではです。
魚のハクセイレプリカは、それほど珍しいものではありません。
ペットショップや観光地などで、安価な物が熱帯魚を中心に市販されています。
しかし、長年、本物のハクセイを手掛けてまいりました私どもが製作するハクセイレプリカは、あくまでも本物のハクセイを越える物を製作する事を目的と致しましたものです。
当方のハクセイレプリカは、長年の研究の末に考案致しました独自の製法により製作されておりまして、一般に市販されているレプリカとは、その仕上がりは、まったく異なります。
勿論、作品一個あたりに掛ける製作所要時間は、通常のレプリカの比ではありません。
本物のハクセイ以上の時間(当工房比)を掛けて製作しています。。
その為、販売価格も、本物のハクセイよりも高額な価格設定となっております。(当工房比)
一般に市販されている安価なレプリカは、胴体、尾ヒレ、背ヒレ、臀ヒレ、腹ヒレが一体で成型されています。
その為、本来、半透明であるべきヒレが透明に再現されていないのは勿論、大量生産を目的として製作されている為、彩色も、雑と言わざる終えません。
当方が製作するレプリカは、一旦、魚全体をシリコーンゴムで型取りした後、更に、魚すべての各ヒレを別パーツとして型取りします。
そうする事により、胴体は丈夫なポリウレタン樹脂、各ヒレは透明なポリエステル樹脂と、2種類の素材による、胴体とヒレ、合わせて7ピースの別パーツとして成型し、こうして製作した透明なヒレを、寸分の狂い無く胴体に植え付けていくという、独自に編み出した、気の遠くなるような工程を経る事で、本物と同様な透明なヒレを再現する事を実現させています。 ウマヅラハギのパーツ
次に着色ですが、先に述べましたとうり、「真鯛」「黒鯛」のように、ウロコ一枚にも、微妙な色合いの変化を持つ魚の着色は極めて難しく、本来、これらのウロコ一枚一枚を手書きにより彩色しなければ再現できないものですが、それには莫大な時間を要してしまうという問題だけでなく、従来の彩色法では限界が有り、活魚の色合いを再現することは、極めて困難です。
当方は、同一形状の物が複数製造できるというレプリカの利点を生かし、ウロコの一枚一枚をマスキングしてエアーブラシを行う、独自の彩色法を編み出す事により、本物のハクセイでは実現できなかった、リアルな彩色を実現させています。
魚の眼球。
これもまた大変重要です。
本来、ハクセイの義眼は、他の動物にも利用できる、言わば既製品の義眼が用いられているのが一般的です。
その為、魚らしさに欠ける眼球のハクセイも珍しくありません。
当方は、この点にも、とことんこだわり、研究に研究を重ねて開発した、自家製の義眼を用いています。
「真鯛」には真鯛の、「黒鯛」には黒鯛の特有の眼球を、まるで生きているかのように完璧に再現しています。
次に額縁ですが、こちらは、市販の油絵用額縁(ガラス付き)を用い、これに、独自の製法を用いて製作致しました自家製の裏出し(魚のバック)を組み込んでおります。
これは、魚の美しさを演出する為に、試行錯誤を重ねてデザイン致しましたもので、石垣状の凹凸を持たせた、手の込ん製法を用いる事により、見る角度によって、表情の変化が楽しめる、味わい深いものに仕上がっています。
このような複雑な工程を経て製作された当方のハクセイレプリカは、正に釣り上げた時の活魚そのままの色艶、「食べてみたくなる程の、いきいき感」がリアルに再現されております。
湿度の高い環境下でも虫付きの心配が無いのも、レプリカの利点です。
その為、釣りファンの方だけでなく、お店のインテリアとしてもお勧め致します。
最後までお読み頂きまして、誠に有難うございました。
ArtRomanCK 横山 龍彦
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